関連するコトバ 『 みんなの学校 』
「みんなの学校」が教えてくれること
以下の文章は1か月くらい前に書きかけていたものなのですが、続きがかけないまま放置され、やっと今日重い腰を上げました。したがって季節がずれていますが、書き直すとまたまた遅くなりそうなのでこのまま失礼します。
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季節はすっかり秋ですね。
とはいえ、雨、雨、雨ですっきりした青空はあんまりなかったように思われる今年の秋。夏から秋そして冬へ、急ぎ足で駆け抜けていくようです。
そんな中、先日ある教育講演会に行ってきました。
公立学校の現役校長先生のお話です。校長先生の話だから堅い話と勝手に思っていた私の予想は大きく外れました。
校長先生自身の体験談が中心で、しかも失敗談から何を学んだかという、校長先生の講演内容としては結構ユニークなお話でした。同時にその教育方針と実践は魅力にあふれ、あっという間の2時間でした。この日のテーマは「みんなの学校」。
講演者は、ドキュメンタリー映画で見た方も多いかもしれませんが、大阪の公立小学校「大空小学校」の市場達朗校長先生です。映画に登場した木村泰子校長は退任され、木村校長から引き継いで3年目。映画の当時は教頭先生をされていた方です。
その教頭先生が、大人も子どももお互いが育ち合う学校の中で、校長先生として育っていくプロセスをお話しされたのが今回の講演といってよいと思います。
その失敗のエピソードは、たとえばこんなふうです・・・。
ある台風の日、学校は休校になりました。子どもたちは登校してきませんが、先生たちは学校で待機していました。そんな中、校門のインターフォンが鳴りました。教頭先生が応答すると、A君が台風の中、登校して来てしまったのです。教頭先生は学校が休みだと告げ、気をつけて帰るように言い、A君を帰しました。
すると(当時の)木村校長が即座に職員室に飛びこんできて、すぐにA君を連れ戻すよう他の教員に指示を出し、教頭先生(現校長の市場先生)はその場で校長室に呼ばれたそうです。
「教頭先生。自分の子どもでも嵐の中を帰れ言うんか?!」と木村校長。市場教頭先生は、本当にその通りだと、ただただ言葉もなかったそうです。「台風事件としてその後も語り草になっています」と笑って話されていましたが、校長先生が失敗談を次々披露する講演会もあまりないだろうと思いつつ、教育観を根底から問い直されるくらいの実践であることが伝わってきました。
そうしたことが毎日のようにあり、子どもも、教職員も、親も、地域の人も、みんながお互いに教え合い学び合う仲間という考えで、学校が成り立っています。
なので、授業はいつでも見に来てよいが、廊下で立って見ているのは×。教室の後ろに立っているのも×。見るのではなく、一緒に机に座って勉強する・活動する、が基本です。
そして、大空小学校のたった一つの約束ごとは、「自分がされてイヤなことは人にしない、言わない」これだけだそうです。マニュアルやルールはありません。あると考えなくなるから、とのこと。
この約束は大人にも求められます。同時に、約束を破ったときは「やりなおし」ができます。
「やりなおし」とは校長室に行って、校長先生の前で自分のやってしまったことを話すのです。校長先生は「どうしたん?」と声をかけ、最後まで話を聞く。その後、「大丈夫か?」と一言。
「これだけでよい」(木村元校長)そうです。本当にこれだけ?と思ってしまいますが、これだけなんです。これを大人も同じように約束を守れなかった時にやるのだそうです。
こんなで本当にうまくいくのだろうか、と心配になりそうですが、心配はまったくの杞憂に終わります。暴力をふるう子、障害のある子、どの子もともに学び、助け合い、笑い合う学校が現に存在していること・・・希望が生まれます。そして勇気を与えられます。
しかも、子どもたちだけでなく大人も育っていく学校なんです。さらに、私立ではなく公立小学校なんです。
講演の後、「行ってみたいな~。実際に教室に座って授業を受けてみたいな~」そんな感想が私の中に生まれました。なぜなら、私たちは本当にさまざまな思い込みや価値観に縛られていると感じるからです。校長先生の失敗談の数々は、そのまま自分に当てはめて考えざるを得なかったからです。
それらの思い込みを払拭するには、単に知識としての理解でなく、実際に体験して初めて、大空小学校の目指すものが肌身でわかるに違いないと思ったからです。それは私たちみんなが求めているもの、今この時代を生きる上で必要とされるもの、そんな気がしています。
今サイトを見たら、2017年2月21日から東京で公開予定のようです。未見の方は、よかったらぜひ!