セレニティカウンセリングルーム

「批判なき真面目さは・・・」

写真は、先週末、カウンセリング学会に出席したときのものです。手前の橋の欄干には「ここからの眺めが、春日部で一番美しい風景・・・」との看板がかかっていました。

なるほど、橋から望む風景は、両岸の緑が川面に映り、青空の下を、川が緩やかに弧を描いて岸辺の草の陰に消えていく・・・。そんな心和む風景でした。

ところで、カウンセリング学会は、教育、心理、福祉、医療、子育て、行政、司法などなど、実にさまざまな分野の構成員からなるので、研修会や講演会のテーマも非常にバラエティに富んています。それらバラエティに富んだテーマの研修を受け、次々と講演を聞くにつれ、当然のことながら、人や社会のことについてさまざまな角度からいろいろなことを考えさせられます。

「幸せって何なのかなあ?」とか、「社会のあり方は?」とか、「自分自身の問題としてどうなんだろう?」というように、出てくる疑問や課題は尽きません。研修や講演会に参加して何かが解決したというよりも、課題や問いをもらって帰ってきたという方があっているかもしれません。

そんなモヤモヤした頭の中に、ふと手にした新聞記事の一行が目に飛び込んできました。

「批判なき真面目さは悪をなす」

評論家の吉武輝子さんが敗戦後の旧制女学校で、岡本先生という50代の女性教師から聞いた言葉だそうです。

ある時、先生は授業中にふと黙りこくり、ぽろぽろと涙を流し、そしてこう言われたそうです。
「皆さん、批判なき真面目さは悪をなすことを忘れないでください。私はどれだけ、生きたいと思う若い人を殺すことに手を貸したか分かりません」

しばらくして先生は、「人を教える資格がない」と言って、学校を去り、実家に戻る決心をしたそうです。先生は駅で見送る生徒達に、重ねて「批判なき真面目さは悪をなす。忘れないでね」と何度も繰り返したそうです。

吉武さんは言います。
「思えばこのころ、学校は先生と生徒が目線を平らにして向き合うことができる場所でした。これこそ本当の戦後民主主義教育です」

岡本先生のとった行動と言葉は、きっと生徒達の胸に深く刻まれたことと思います。教育に限らず、人と人とが平らな目線で向き合うことができたら、言葉には血が通い、相手の心に届くはず。そうした言葉を使っての教育は上辺の知識ではなく、深い理解と効果を持つものになるのではないでしょうか。そして何より嬉しいのは、そんな人間関係の育まれる社会は、人がもっと自分自身を大事にできて、なおかつお互いが思いやりを持てる、そんな社会になる気がします。

批判をするには自分の頭で考えなくてはなりません。考えたことは言葉で相手に伝える必要があります。・・・自他を尊重しつつ、言葉でちゃんと意思表示していく、アサーション・トレーニングにも通じる言葉だと思いました。岡本先生の言葉、しっかり心に留めておきたいと思います。

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