セレニティカウンセリングルーム

関連するコトバ 『 コミュニケーション 』

図書館に購入希望を

先日、拙著「『きちんと自分の気持ちが言える子』に」のご案内メールを差し上げたところ、ある方から嬉しいお返事をいただきました。

その方はすでに定年退職されて何年にもなられるので、直接お子さんに関わることは少ないとのことですが、お嫁さんに贈るためにと購入してくださったそうです。こんなふうに、直接ご自身が読まれるわけではないのに、周りの人に薦めたり、贈ってくださったりしていて、本当にありがたいことと思いました。

また、お近くの図書館に購入希望を申請していただけますと、より多くの方に読んでいただけるので、図書館に足を運ばれることがありましたら、お時間のあるときに、どうぞよろしくお願いいたします。
「きちんと『自分の気持ちが言える子』に」

他愛ないオシャベリ

夏休み間近のある日、大学の学生相談室に、ヒョッコリ、A君がやって来た。A君は今年の卒業生だ。心身の不調で卒業できるかと成績を心配していたが、何とか無事卒業できたようで、私もホッとしていた。でも、就職先が決まらないと言っていたので、気にはなっていた。

「ちょっとだけ話していいですか?誰か来たら、すぐ帰ります。」

遠慮がちに言うA君。

持病もあり、対人関係も苦手、家族ともコミュニケーションがとれていないという状況で、一刻も早く仕事を見つけて自活したい。でも、仕事が決まらない。と、暗中模索の堂々巡りが何ヶ月も続いていた。

その日も、イスに座るやいなや、
「ダメです。決まらないッス。就職先、何度面接受けても、みんな落ちちゃって」

質問しながら、いろいろと現状を聞いていくが、聞けば聞くほど八方ふさがりの状態で、私としても掛ける言葉もない。学生相談なら、相談に乗りようもあるけれど…。卒業生では、話を聞いてあげるのがせいぜいだ。

「そう、困ったわね」と、一緒に考えこんでしまった。

すると、「迷惑がってません?」と訊いてきた。

「別に迷惑とは思っていないけど、何か有効なアドバイスもできないし、どうしたらいいのかと考えているのよ」
と正直に言った。

そして気持ちを切り替え、ズルッとした姿勢でイスに腰掛けたA君を見て、ふと、こんな言葉を投げかけたくなった。

明るい調子で笑いながら、問いかけた。
「もしかしたら、面接の時、そういう態度で行っていない?」

「ええー?行ってませんよ。そんなことはないっす。絶対にないッス。今だけですよ」と、笑いながら、「ありえない!」というふうに、猛烈に否定している。

私「そう、ならいいけど、態度は大事だからね。気持ちがあるなら、それをちゃんと表さなくちゃ。」

すると、

A「あ、もしかしたら、読まれてるかも、相手に。そんなにその会社で働きたいとか思ってないから。とりあえずどこかにと思っているから」

私「無意識のうちに気持ちが態度に出ているかもしれないわね。少なくとも、今仕事が欲しいなら、『やらせてもらえるなら一生懸命やります』という態度で面接に臨まないとね」

「とにかく、態度の大きいのはダメよ!」と、こっちも笑いながら、ビシッとクギを刺す。

A君、それは分かってますと何度も言いながら、

「あー、ラクになった!ずっと誰とも話してなかったから~。」
と、ほんとに肩の力の抜けたような一言。

私「誰でもいいから、話ができる相手がいるといいね。売店のオバサンでも誰でもいいから、ちょっとしたオシャベリができるだけで、違うでしょ」

「無理ッス」と、首を振りながら、立ち上がったA君。

「仕事見つかるように祈ってるからね」

「はい、ありがとうございました」
来たときよりは、少しだけ元気な後ろ姿に、私もホッとする。

他愛ないオシャベリのできる、家族、友人、同僚、誰でも良いから、話せる相手がいれば…と思う。

日本中に、日頃、誰ともオシャベリすることのない多くの若者が、悶々と一人で苦悩を抱えているのだろうな。
人に話したからと言って、問題が解決するわけではないかもしれないけれど、少なくとも一時元気を取り戻せれば、また自分で歩き出そうという気持ちにもなれるだろう。

対人関係が苦手で、一見、人を遠ざけているように見える若者も、心の底では人との触れあいを望んでいる。A君に限らず、学生達の中には、日頃、家族とも友人とも会話をほとんどしないという者も、珍しくないことが彼らの話から伺える。

どうかほんの少しでいいから、人のつながりがゆるやかに結べる社会になってほしいとつくづく思う。
今日もまだA君は、面接にと向かっているのだろうか。

日本中のA君、とにかく生き抜いて!
自暴自棄にならず、このつらい一時を何とかやりすごそうよ。
がんばれー!

(日頃、相談室で学生達の悩みを聞く中で感じていることを、A君個人の出来事に絡めて書いたものです。趣旨を変えない範囲で設定に手を加えてあります)

やっと校正終了

春から取り組んでいた本の原稿の校正がやっと終わりました。月曜締め切りだったのですが、原稿を送り出したのが日曜の午後。宅配便の4時の集荷に間に合わせなくてはなりません。お店に持ち込んだのが3時50分というスリリングな展開で、送り出したらドッと疲れが……。というわけで、昨日、今日はまだ何だかボーッとしています。

タイトル:『きちんと「自分の気持ちが言える子」に』
副題:―意思表示できる子は伸びる!―
(PHP研究所)

私としては、タイトルに少し違和感があるのですが、出版の事情としては、まず読者が手に取ってくれないことには始まらないので、ということのようです。親の求めるもの=時代のニーズでもありますから、直球のタイトルに心惹かれるというのは理解できます。

確かに、手に取ってもらわなければ始まりませんものね。読んでいただいて真意が伝わればなあと思います。

意思表示することで、子ども一人ひとりがイキイキと自分らしさを発揮し、自己肯定感情を育てていく…お母さん・お父さんがそれをサポートしながら、自分たちも自己表現がうまくなって自己肯定できる、そんな欲張り(?)な内容をめざしたのですが、果たしてどうでしょうか。

刊行についての詳しいお知らせは、後日改めてさせていただきます。

原稿書き

すっかりご無沙汰してしまいました。本当に申し訳ありません。

以前に少し触れたかと思いますが、今、本の執筆のお話を頂いて、慣れない原稿と格闘しています。テーマは「ちゃんと自分の気持ちが言える子に」です。内容は子どもの自己表現についてでして、アサーション・トレーニングの考え方ををベースに書いています。編集の方とやりとりしながら進めているのですが、私自身、改めていろいろなことを学ばされています。

自分の思いを的確に伝えることの難しさ、自分自身の自己表現への振り返り等、自らの非力を痛感しつつ、いただいた機会に精一杯応えられるよう、今できることをやりきりたいとがんばっています。

気持ちを込め、必要とされる読者に届きますようにと、祈りを込めて書いています。

応援していてくださいね。
ご無沙汰のお詫びのつもりが、今度はお願いになってしまいました。